独特な辛みの伊吹大根
作成:筒井杏正


 伊吹山麓は石灰質の痩せ地で米作よりもソバやサツマイモ、ダイコンといったものにむいています。江戸時代から昭和中期には、三合目から五合目辺りにかけソバやダイコンが作られていて、遠くからそば畑に白い花が咲くのが見えた言います。
小泉や大久保で作られたダイコンは「峠大根」、また根の長いことから「ネズミ大根」と呼ばれ、近郊の長浜や彦根の町で売られ、その美味しさはとても評判でした。特徴は辛みが強く「けっからかし大根」とも呼ばれ、伊吹そばの薬味として好評です。

 この伊吹ダイコンは、品種改良された種が出回り、しばらく作られていなかったのですが、最近になってその純粋種が再度栽培されるようになりました。8月に種を蒔き、10〜12月頃までに収穫されるのですが、他との交雑を防ぐ工夫が必要で独特の丸みのある純粋種の生産量は多くはありません。購入時期は、冬期で、伊吹周辺にある道の駅などで買うことができます。おろしの他、炊いたり陰干しすると独特の辛みが抜けるため、煮ものや漬物にすると旨みが増し美味しくいただけます。

▲一説では、日本そば発祥の地は伊吹山麓とのことだが、そばの一番旨い食べ方は、江戸っ子だってご存じのない。だし汁と特級の辛み大根、伊吹大根おろしをぶっかけ、ずるずる大きなすすり音を立て、一気にのどを通らせて流し込むことが、通と言われる粋な食べ方だ。
しかし、賞味できる時期は、伊吹大根の収穫時期と新そばが出回る12〜2
月の3ヶ月間。さ〜、この絶好の旬を逃さず伊吹山麓に足を運んでくだされ。