伊吹山の自然と四方山話 2013年度外来植物調査報告書

2013年度
伊吹山ドライブウェイ沿道外来植物侵入追跡調査結果報告書
調査責任・文責:筒井杏正

【調査目的】
 日本に定着した外来植物は,明治時代から「帰化植物」と呼ばれ,外国から観賞用や園芸用、公園や道路法面などの緑化用,あるいは家畜の飼料として,いろいろな場面で有益に使われてきました.かっては,これら帰化植物が野生化して全土にゆっくり広がりながら,わが国固有の種とうまく共存してきたために長い間特に問題視されずにいました.
 しかし,戦後からの急速な経済発展に伴った交通網の発達や輸入される物資の量の増加などもあり,一度侵入してしまったものが拡散するスピードが早くなってきました.そして,「帰化植物」と呼ばれる外来植物は2002年(H14)には既に1600 種以上が確認され,その後さらに,毎年多くの新しい外来植物が「帰化植物」として確認され,今も増え続けています.
 私たちは,長い時間をかけて創られてきた日本の自然と共存した生活,そして地域特有の自然そのものの大切さをあまり意識せず,便利なライフスタイルを求め周囲の自然環境を変えてきました.

 近年になって,地域の生態系に影響を及ぼす外来種の問題が少しずつ意識されるようになり,2004年(H16)には「外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」が制定され.それは外来生物の中で”定着している”
”いない”に関わらず,地域の自然環境に大きな影響を与え,生物多様性を脅かすと考えられるものが「侵略的外来生物」として指定され,また他にも多くの外来種が「要注意外来生物リスト」にのせられています.

 伊吹山の山頂一帯の草原群落は,国指定の天然記念物に指定され,約800種類の植物が生育するとともに,9種類の固有種を保持しています.
 しかし,この豊かな植物の生育を脅かしているものの一つは外来植物です.そして,これら外来植物の侵入によって生育地を奪われたり,在来植物と交雑で本来なかった交雑種が出現してしまったらという懸念が現実的なものとなっています. しかも,その外来植物の分布域を広めているのが私たち自身とすると….
私たちは,この問題に対してどのように関わっていけば良いのか,そして,紛れもなく伊吹山に侵入する外来植物の種類は年々増え,スピードをあげ拡大し侵入しています.

 このことから本会は,2008年(H20)と5年後の2013年に伊吹山ドライブウェイ沿道および山頂の3つの登山道(西・東・中央)を踏査し、侵入する外来植物分布調査を実施しました.本会が実施する「伊吹山外来植物侵入追跡調査」によって,今後の外来植物防除および駆除対策事業の計画やその方法を提案し、微力ながら自然環境の保全に貢献できればと願っています.
 また、調査データを示すことで,一般市民のみなさんに外来植物侵入の状況を知る機会を提供し,伊吹山の変わりゆく自然に少しでも目を向け関心を持つていただくことが,自然環境の再生や保全に繋がるという意識の向上に結びつくことができればと願っています.

 そして,今こそ伊吹山における生物多様性とは何か,それが失われつつある課題は何か,について一緒に考えることができればと思っています.



文責:筒井杏正

【伊吹山DW沿道の実施場所】
 伊吹山DW国道365号交差点(信号)を起点に山頂駐車場までの沿道16.1キロメートルに設置されている待避所のうち任意の33カ所.特にチチブリンドウ,ホソバノツルリンドウ,イブキコゴメグサが生育する伊吹山DW駐車場下り約160メートル付近までは,ライントランセクト法による網羅的な植生調査を実施.
 ※メッシュ地図参照(上図)

【実施日】 第2回(延べ7日間)
  2013(H25)年 7月9日・10日,8月9日・12日・22日,9月1日・2日

【調査方法】

1.
今回、調査地であるほとんどの待避所は,アスファルト舗装が施されているため,その舗装されていない周囲の植生を調べた.また,調査地点の植生はほとんどが草本のため,外来植物の草本を中心に調べた.
2.
調査方法は,地形や植生状況に併せ,下記の3つの方法をから適するものを選択した.
1. コドラート法(方形区法)=従来通り(2メートルまたは4メートル四方形)
2. ライントランセクト法=調査区区間に中心となるラインを10メートル単位でとり,その左右1メートルまたは2メートルの範囲を調査.
 ※調査対象とした待避所は,ほとんどがアスファルト舗装が施されているため,施されていない外縁にラインを任意に設定し,その植生を調べた.その周囲の)
3. ゾーントランセクト法=調査区のほとんどは伊吹山DWの待避所にあたり,その範囲が小面積で限られる場合は,その区域を1ゾーンとして全面調査した.
3.
種が同定できないものは,採取して持ち帰り後,同定した.

  • 【今回の調査・撮影・記録・同定・計測・外来植物駆除試験に協力いただいた皆さん】
     池野忠勝,岩元佐代子,上原千壽子,福田弥生,櫛田雅子,山田健造,木村達雄,平野三重子,市川勝規,筒井杏正,今村道子,
     見澤谷慶實,中島忠雄,幡本真知子,講師:片山泰雄(順不同)

【伊吹山ドライブウェイ沿道調査結果による外来植物リスト】

  今回の調査による外来植物は18科49種.内2008年,2013年続けて確認され定着したと思われる植物をチェック.
 赤字=侵略的外来植物ワースト100(IUCN) 青字=要注意外来植物  =定着したと見られる外来植物

※ハマエノコロは、国内移入種と思われる.通常,海浜側に生育するとされるが,陸上または岡上に生育するハマエノコロが存在するという一説もある.伊吹山DW沿道で確認された場所は標高1,000メートル付近の待避所で,他地域から運ばれた工事用土砂によるとも考えられるが定かではない.このハマエノコロは,DW沿道から笹又登山道に入った一部でも生育する.
【伊吹山ドライブウェイ沿道外来植物分布】 2008年調査・2013年調の比較


【伊吹山DW沿道の外来植物の確認状況】

<2013年、新たに確認された外来植物>
(アブラナ科)セイヨウアブラナ,
(アヤメ科)オオニワゼキショウ,
(イネ科)オニウシノケグサ,カモガヤ,メリケンカルカヤ,
(オオバコ科)セイヨウオオバコ,
(オトギリソウ科)コゴメバオトギリ,
(カタバミ科)オッタチカタバミ,タチカタバミ,
(キク科)オニノゲシ,ホソバノゲシ,ヤブタバコ
(ゴマノハグサ科)オオカワヂサ
(トウダイグサ科)コニシキソウ,ハイニシキソウ,
(ナデシコ科)コハコベ,スセンノウ,
(ヒルガオ科)コヒルガオ,
(マメ科)タクヨウレンリソウ,

<2008年に確認されたが今回確認されなかった外来植物>
(アカザ科)アリタソウ,
(オオバコ科)ヘラオオバコ,
(キク科)ベニバナボロギク,キダチコンギク,オオハルシャギク(=コスモス)
(ナス科)イヌホウスズキ,

<標高1,000メートル(金明水付近)以上で確認された侵略的&要注意外来植物>
(アブラナ科)ハルザキヤマガラシ
(タデ科)エゾノギシギシ,
(イネ科)オオアワガエリ,カモガヤ,シナダレスズメガヤ,
(キク科)セイヨウタンポポ,ハルザキヤマガラシ,ヒメジョオン、フランスギク,
(ヤマゴボウ科)ヨウシュウヤマゴボウ

<標高1,200メートル(山頂駐車場周辺)以上で確認され,定着している侵略的&要注意外来植物(現在の対応)>
(アブラナ科)ハルザキヤマガラシ(現対策=放置)
(タデ科)エゾノギシギシ(現対応=放置)
(イネ科)オオアワガエリ(現対応=一部刈り取り)
(キク科)セイヨウタンポポ(現対応=山頂部刈り取り),ハルザキヤマガラシ(放置),ヒメジョオン(放置)、
     フランスギク(現対応=駐車場周辺刈り取り)

▲フランスギク根生葉(2013.08.04)
発生地地獄谷からDW沿道沿に北尾根&笹又道待避所付近(標高1200m)までの下りで満遍に繁殖.
▲ハルザキヤマガラシ(2013.07.03)
滋賀・岐阜県境待避所(標高900m)が発生地と思われ,ここから上方に繁殖する.
▲ヨウシュウヤマゴボウ(2013.09.03)
全国の林道で猛威を振るって侵入.
沿道は金明水待避所(標高1000m)周辺で確認.
▲シナダレスズメガヤ(2013.09.04)
(標高1220m付近沿道.法面緑化工事で,当初散布されたものが繁殖したと思われる.

【伊吹山DW山頂駐車場からの3つ(東・西・中央)登山道と山頂部で確認された侵略的&要注意外来植物】

 伊吹山山頂駐車場(約1220メートル)以上に生育する要注意外来植物は、フランスギクを除いて以下が分布する.
(キク科)セイヨウタンポポ(現対応=山頂部刈り取り),ヒメジョオン(現対策=放置)
(アブラナ科)ハルザキヤマガラシ(現対策=放置)
(タデ科)エゾノギシギシ(現対応=放置)
(イネ科)オオアワガエリ(現対応=一部刈り取り)
▲ハルザキヤマガラシ(2013.06.09)
山頂で開花.中央・西登山道とも急激に増加している.
▲エゾノギシギシ(2013.07.21)
西登山道に自生し山頂部でも多く
見られ、毎年増加傾向
▲オオアワガエリ(2013.08.06)
山頂部は昨年刈り取られたが依然繁殖.DW沿道へと拡大
▲ヒメジョオン(2013.07.21)
東登山道へ侵入.散布された種子はどこへでも入り込み生育する.

<伊吹山DW沿道 標高1220メートル周辺の植生調査と外来植物定着度>

 調査区域=伊吹山DW山頂駐車場 地獄谷から下り160メートル区間
 調査期間・回数=2008年(夏・秋),2013年(夏・秋)

▼伊吹山DW駐車場地獄谷付近調査区域概要図
猛禽類観察者による草刈り(地獄谷より下り160メートル区間)  2013.08.04撮影
あちこちで場所・植物種など分別のない草刈り跡が確認された.これは猛禽類観察者の場所確保のためと思われる.この分別のない草刈りによってつる性の希少種は絡まる草木を失い激減、また放置された草により土壌は変質し,草丈の低い希少植物などの生育環境に大きなダメージを及ぼしていると思われる.