早秋の伊吹に芳しき土の香ただよう。

 木の芽おこしの慈雨どころか、3月12、13日と伊吹山麓から琵琶湖畔にかける湖北、湖東一帯は、春の吹雪に見舞われた。積もった雪は、梺で十数cmにも達した。しかし、しょせん春の雪、翌日には柔らかな陽が差し、暖気が流れ込むと早々に融け去った。
 3連休初日の3月19日、季節外れの五月晴れを思わす紺碧の空が久々に伊吹の天空をおおった。

3合目から山頂を望む→

3合目から山頂を望む
 今冬、スキー客で賑わいを見せた三合目のゲレンデは、すっかり雪溶けが始まり、芳しき土の香が漂い始めている。
 その北麓のお花畑は、落ち葉のすき間からスハマソウがさ緑の葉を伸ばし始めている。
 3合目は、里より少し遅れセツブンソウ、キバナノアマナなどが花芽を出し開花する。
スハマソウ

5合目から山頂を望む。
 ▲5合目から山頂を望む。6合目辺りから地肌は無くなり、アイゼンを装着し山頂を目指す。
 五合目までの登山道は、岩場や木々の陰の淡雪が融け、所々いくつかの小さな水の流れをつくっている。陽が射し込むところは、枯葉を一面敷き詰めたセピア色に見えるが、目を凝らしてみると薄黄や浅緑の幼葉や花芽の膨らみが見える。また、いたるところで土を団子状に盛りあがらせるのは、小型モグラの一種ヒミズの仕業。小さな春の息吹の鼓動が感じとれる。
マユミの樹氷
▲マユミの樹氷
 ▲6合目辺りから、マユミの低木樹林があちこち見える。それらはすべて見事な樹氷となり、そのクリスタルの世界に魅せられる。
 4・5日前降った雪は、この辺りでも水気たっぷりだったのか、その名残の新雪すら見当たらない。
 が、融けて流れた氷の溜まりが陽に煌めく。

 8合目の祠→

8合目の祠

 夏、あれほど賑わいを見せていた山頂の伊吹山神社と山小屋の通路は、寒風が吹き抜けるが、なぜか心地よいほどの閑静な佇まいを見せていた。
山頂の伊吹山神社と山小屋の通路
▲山頂の伊吹山神社と山小屋の通路
 上の写真は、山小屋が立ち並ぶ入口で、ほとんど地肌を見せている。
 右写真は、この通りの一番奥にあるえびす屋さんだが、屋根の辺りまで雪に埋もれ約2m近くもある。これも風の悪戯か。
えびす屋
 冬の最中は、山頂シンボルの日本武尊像も雪中であっただろう。
 元気いい熟年夫婦が記念写真を撮りあい、健康的で幸せそうな満面の笑みを浮かべていた。
日本武尊像

山頂から山並みを望む。
▲山頂から遠く山並みを望む。
 山登りはその日の天候によってラッキー度が違う。そのベストは快晴に恵まれること。今日の頂から眺める、織りなす山並は、三周ケ岳、白山、御嶽などがぬける蒼い空を背景に冠雪の頂きを輝かせている。
三角点から山小屋を望む。
▲三角点から山小屋を望む。
  伊吹山付近は、全国でも雪の多い所として知られている。上の写真は、大きな凹みがある山頂のお花畑の一角だが、雪が吹き溜まり、フラットになっている。3〜4mは積雪しているだろうか。
 大雪地帯を象徴するかのような記録が残っている。それは昭和2年2月14日(1917)のことで最深積雪量が11.82メートルにも達した。これは世界の山岳で確認された最高記録だったというから驚きだ。

▼濃霧が立ち枯れた草の茎に樹氷を創る
「草氷」の1
 雪の悪戯は、時にさまざまな芸術を創出する。濃霧が木々の枝に凍りついたものは樹氷。
 それでは、写真のように立ち枯れた草の茎に凍りついたものを「草氷」「crystallized snow on plants」・・?
 兎角、伊吹山は年中、濃霧が立ち篭め、今日のように晴れる日は少ない。
「草氷」に2
山頂から琵琶湖を一望
▲山頂から琵琶湖を一望
いつも強風が吹く、西側のお花畑から山頂を望む。
▲いつも強風が吹く、西側のお花畑から山頂を望む。
山頂は、これからも度々の降雪を繰り返しながら、ゆっくりと春に向う。
 しかし、里山のセツブンソウ群落はすでに盛りを過ぎ、アズマイチゲ、キバナノアマナなどが顔を出しはじめた。

3/12、春の吹雪の中で
頭を垂れる
セツブンソウの群生
山麓の休耕畑や山林で→

 山麓のあちこちの雑木林は、やがてキブシ、ダンコウバイなどの花で彩られ春色を深めるだろう。


滋賀自然環境保全・学習ネットワーク
伊吹山自然観察会「伊吹山四季のレター編集部」
ibuki@ds-j.com (筒井杏正)