1・伊吹山の概要
- 滋賀県の最高峰で海抜1377メートルの伊吹山は昔から珍しい植物や薬草の多い山として世に知られ、県内でも登山者が一番多い山である。また地質はほとんどが石灰岩で、いたるところにカレンフェルト地形や露岩が見られる他、多様な山岳風景に富んでいる。この石灰岩の中にはフズリナ・ウミユリ・アンモナイトなどの化石が至るところに含まれており、大昔は海底であったことを物語っている。カタツムリの多いことでも良く知られている。伊吹山は1,000メートル程度の山であり、高山でも亜高山でもなく、県内の稜線を造っている他の山と大差はない。
何よりもこの山が特異なことは、山麓を除けば大部分に小灌木を交えた草原が広がっている点である。八合目以上は広大なお花畑で、花と涼を求めて夏には多くのハイカーが訪れる。

夏の山頂付近のお花畑
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石灰岩の中の化石フズリナ
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- 2・国の天然記念物指定の概要
- すでにこの山は琵琶湖国定公園に指定され、特に標高1,200mから1,350mの区域は「伊吹山地草原植物およびその自生地」として滋賀県の天然記念物として指定され保護されてきた。今回新たに国の天然記念物に指定されたことによって、その価値と保護の重要性が高まってきた。今回の指定の概要は次の通りである。
■指定した名称 伊吹山頂草原植物群落
■指定の時期 平成15年7月25日
■指定した機関 文部科学省 ■指定のエリア 指定地域は「伊吹町大字上野」となっているが、すでに県の指定の標高1,200mから1,350mの区域と全く同じ範囲である。(山頂部の山小屋周辺は除いてある。)よって滋賀県の指定は消えることになる。
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- 3・エコツーリズムの必要性
- 伊吹山は年間に数十万人の人が訪れる。中央アルプスや尾瀬ケ原のように大型バスで押し寄せる多勢の観光客による自然破壊行為や深刻な汚染問題はまだ発生していないが、このまま放置すれば同じ課題に直面することになる。マスツーリズムの弊害である。観光地の中にはこれらの弊害を防ぐために入山者やマイカーの規制をしている所も増えている。伊吹山で今なすべきことは、訪れる人にこの山の魅力を伝えるとともに、その環境保全の重要性について啓発活動を続けることであろう。チラシを配布したり、放送で注意したり、監視員を置く事も必要であろう。しかし、これらはあくまでも外圧による啓発である。私は一歩進んで、訪問者自らの協力を得ながら、環境保全に力を入れた「エコツーリズム」の推進が重要と考えている。(すでにこの事については80号で「エコツーリズムを考える」と題して書いているので参照にされたい。)
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- 4・地域の人と関われない現在の観光システム
- 夏ともなれば、全国からいろいろの形のツアーで大型バスで多くの人が伊吹山を訪れる。8合目にあたる駐車場でバスを降りた人たちは、頂上めざして歩き出す。お花畑の美しさに心も体もリフレッシュでき、みんなの顔は笑顔に変わっていく。山小屋で土産を買い、昼食を食べた後は下山となる。しかし仲間の中に自然に詳しい人がいれば別であるが、目の前の色とりどりの花の名前も、今歩いている所がかつては海底であったこと、この地に5〜7メートルの積雪があること、この山を守るために地元の人がどんな苦労をしているのか、なぜ山頂に雑草のオオバコが繁茂しているのかなどほとんど知らないまま下山することとなる。
結局、訪れる多くの人は地元の人に接する機会もほとんどなく、この山のすばらしさと保全の重要性については学ぶことなく下山するわけである。
頂上に「伊吹山保全センター」のような施設があれば、専門家や地元の人たちから伊吹山の自然の仕組みや保全の重要性を学ぶことができるはずであるが、そうした計画は今はない。
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- 5・エコツーリズムの幕開け
- 伊吹山を訪れる人にこの山のすばらしさと、保全の重要性を少しでも知ってもらうために滋賀自然環境保全・学習ネットワークが「伊吹山頂10日間連続自然観察会」を昭和63年から実施し、今夏(2005.08)で17年目となる。現在も同じ組織の「伊吹山ネイチャーネットワーク」が実施している。この間実に数十万人の方に説明をしてきたことになる。毎年8月1日〜10日までの10日間、毎日午前と午後の2回、山頂でお花畑を中心とする観察会を本会の約40名の会員がボランティアで実施しているものであり、毎回数百人の方が参加し、恒例の人気観察会となっている。
私たちの仲間がボランティアとしての協力を惜しまないのは、あきないこの山のすばらしさと、熱心に耳を傾けて聞いてくれる登山者との心地よいふれあいにあると思う。
さらに、長年の観察会指導の経験から生まれた手引き書「伊吹山お花畑植物ガイド」も「春」「初夏」「夏」「初秋」の4部を発行している。花の色で分類表示しているためわかりやすく、だれでも一目で植物名を知ることができる点や、1冊100円という手頃さも加わって年間数万部購読のベストセラーとなっており、新しいエコツ−リズム幕開けのシンボルとなることを願っている。
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